SWEET-躊躇いと純情-
-The hesitation and the pure heart- Field of love.


(9)



「‥‥おなか、すいたぁ‥‥。今何時?」

ぼくは空腹感とダルさで目を覚ました。彼は傍らにいて、朝同様ぼくの顔を覗いていた。

「8時半。絢都のおなかぎゅーぎゅー鳴って面白かったよ」

「いい匂い。ごはん作ってくれたのか?」

彼は返事の代わりににっこり笑った。まめだよなぁ。感心しちゃう。

「ご飯の前にシャワー浴びなよ」

っ! そうだった。夢‥‥じゃない。彼を奏路と呼んだこともこの腰の鈍さも。

「起きれる? 一緒に入ろうか」

「大丈夫っ。一人で行ける」

突っぱねて起き上がろうとしたけど。

――腰が立たない。

「‥‥発作起きてないのに」

ぼくがつぶやいたのを聞き取った彼は、起き上がってぼくを持ち上げて言った。

「無理しないで。一緒に入ってあげるv」

い、いま語尾にハートマーク付いてたっ!

「――奏路‥‥きみ、ぼくが気失ってから何した‥‥?」

「ん? 何って何?」

すっとぼけやがって――!! これはどう考えたって‥‥っ、1回や2回じゃないだろ! このダルさと空腹感! イジるの覚えたての頃バカやって限界までヌいた時みたいだぞっ。(ぼくだって昔はバカやってたんだ)

「‥‥ぼく、そんなに何回もイけた‥‥?」

でも気になって聞いてみたら、彼はニヤッと笑った。

「ききたい?」

「うっ、やっぱいい。聞きたくない。恥ずかしくて死んじゃう」

ちくしょう。やっぱし何かしたんじゃないか。

ぼくが怒ってるのも知らないで彼はゴキゲンだった。シャワーでぼくの体を洗い流してくれながら鼻歌なんか歌ってやがる。

あっ!?

「そこはいいって!」

「だめだよ。ちゃんときれいにしとかなきゃ。後で辛くなるの絢都なんだからね」

「いいってば〜。自分でするから」

「自分で洗えるの? 入れたことあるの?」

うっ! それはっ‥‥。

「ほーら。ぼくに任せて」

そう言って奏路はぼくを後ろ向かせ、シャワーの温かい湯を当てながらゆっくり指を入れてくる。

あ。

ぼくは恥ずかしくて顔を覆った。

「もうちょっと足開いて」

「‥‥なぁっ、キタナく、ないのか」

「絢都の体はどこもすてきだよ」

ひえっ。聞いたぼくがバカだった!

「ここも‥‥ぼくを受け入れたって、とってもきれいなままだよ」

奏路はそこを丹念に洗い流す。それって“あばたもえくぼ”ってやつじゃないのかな? そこはどう考えたって排泄するトコロなわけだし。

「恥ずかしい‥‥よ、奏路。もうやめてくれ」

やだな‥‥。なんで、気持ちいいんだろ。

「うん、終わった。‥‥! 感じちゃったの‥‥?」

彼はぼくの異変に気付いて背後から手を伸ばし、変化したぼくをそっと手のひらに包んだ。

「絢都、鏡みてごらん」

言われてぼくは、それまで見ないようにしていた鏡を見てしまった。



「ほら、絢都の気持ちイイ顔‥‥」

そこに映っているぼくは自分じゃないみたいだった。ぼくはこんな顔したことない‥‥。

鏡に映るように後ろから首筋に口付ける彼。

「首‥‥胸、わきばら、腰」

ぼくを握っている手とは別の手で、言葉にしながらそっと触れていく。その手がそこで重なる。

「絢都」

ああ‥‥ンっ。

彼の手つきはいやらしさを増してぼくの全身を撫でまわした。

触られる快感に腰をくねらすこれは‥‥ぼくなのか? ふいに体の奥がジン、と疼いた。

‥‥ほしい。何かを。

「奏路‥‥っ」

何とかしてっ!

「指じゃ、足りないでしょ」

奏路がぼくの耳を噛みながら言った。

「絢都の体、準備オーケーみたい‥‥」

ふあっ‥‥。

そこに何かが当てがわれた。彼は横向きに体勢を変えさせ、鏡でぼくにもそこが見えるようにした。

当てがわれていたのは、彼の‥‥。 

「すぐに入っちゃうね、ほら」

やっ、あっ!

水分を含んだ、すごくエッチな音がする。

はぁっ‥‥。

熱に浮かされていく。

ぼくは頭を支えきれず、ガクリとしなだれた。

「ちゃんと見て。ぼくたちがどうなってるか‥‥」

「‥‥?」

鏡の中にいたのは、彼のを含んで満足そうな顔をしてるぼく‥‥。ぼくたちがしてるのは、けっしてじゃれ合いなんかじゃなかった。

バスタブについた両手で体重を支え、無防備な腰は彼にがっちりホールドされている。

「エッチ、してるんだよ」

奏路は優しく囁いて後ろから抱き締めてきた。

お互いの肌に挟まれている水滴が、表面張力でふたりをより密着させる。彼の肌が吸い付いてくる。

んあッ、あ。

「動かし‥‥て‥‥」

堪らずぼくが背をのけ反らせて奏路を求めると、彼はすぐに与えてくれた。

何度目かの挿入でこすられた時、ぼくは彼の手の中に射精した。

奏路は、息を切らして項垂れるぼくを支え、体位を変える。ソコに彼のを入れたまま、だ。

ぐりんと回され、膝乗りの格好でぼくたちは向かい合う。

「さすがにまだ少ししか出ないか」

彼は、ぼくが今出したものをわざわざ見せてくれた。ほんとに、ぼく何回イかされたんだろ‥‥。

ぼくは彼にもたれかかった。どうしても自力で体を立てていられない。

ぼーっとする頭を彼の肩に預けて、ぼくは彼の耳元にどうにか言葉を届けた。声にする力も出なかったんだ。

「‥‥そ、じも‥‥イきそ?」

「うん‥‥」

奏路が応えてぼくを抱き締める。体位を変えた時から、ぼくの中で彼の嵩が増してた。

「イって‥‥。ここでいいから」

ぼくは彼に、ぼくの方からキスをした。すると彼は驚いたように目を見開いた後、ほわっとする笑顔を投げてよこしたんだ。そのキスの意味に、気付いたみたいに。

「きみにあげる言葉が見つからないよ。大好き、絢都」

甘ーいキス。

ぼくも‥‥だよ‥‥。

んあぅ‥‥っ、ん、あ!

「イクよ、絢都っ」

うんっ‥‥!

友達として好きとか、それ以上に好きとか、そんな境界線は考えてる以上に曖昧なものなのかもしれない。

だってこうして‥‥ぼくは彼を許してしまっている。

ぼくたちはセックスフレンドじゃないから“友達だってエッチくらいするんだろ”なんて、キスやハグと同じようには言えないけれど‥‥。

きみがぼくにとってなくてはならない存在だと認めた時から‥‥いや、もっと前、きみにはじめて助けられた時から‥‥たぶんぼくは、きみを受け入れてた‥‥。

そう想いを込めてぼくは奏路の首に腕をまわした。

前に奏路は言った。「誰にも受け入れてもらえなくても、だからこそ自分を偽ったりはしないし、したくない。こんなぼくでごめん」と。

ポリシーを持ってるって、さいこーにかっこいいよな。

ぼくは事故で人の助けなしでは生活できない体になってしまった。人に迷惑をかけてしまう自分が許せなかったぼくを、奏路が「いい」と言ってくれた。

彼の至れり尽せりには、はじめ嫌悪していた。けれど慣れてしまえば、甘えずにはいられない‥‥。彼のこの腕に、すがらずにはいられない‥‥。



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