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「‥‥おなか、すいたぁ‥‥。今何時?」
ぼくは空腹感とダルさで目を覚ました。彼は傍らにいて、朝同様ぼくの顔を覗いていた。
「8時半。絢都のおなかぎゅーぎゅー鳴って面白かったよ」
「いい匂い。ごはん作ってくれたのか?」
彼は返事の代わりににっこり笑った。まめだよなぁ。感心しちゃう。
「ご飯の前にシャワー浴びなよ」
っ! そうだった。夢‥‥じゃない。彼を奏路と呼んだこともこの腰の鈍さも。
「起きれる? 一緒に入ろうか」
「大丈夫っ。一人で行ける」
突っぱねて起き上がろうとしたけど。
――腰が立たない。
「‥‥発作起きてないのに」
ぼくがつぶやいたのを聞き取った彼は、起き上がってぼくを持ち上げて言った。
「無理しないで。一緒に入ってあげるv」
い、いま語尾にハートマーク付いてたっ!
「――奏路‥‥きみ、ぼくが気失ってから何した‥‥?」
「ん? 何って何?」
すっとぼけやがって――!! これはどう考えたって‥‥っ、1回や2回じゃないだろ! このダルさと空腹感! イジるの覚えたての頃バカやって限界までヌいた時みたいだぞっ。(ぼくだって昔はバカやってたんだ)
「‥‥ぼく、そんなに何回もイけた‥‥?」
でも気になって聞いてみたら、彼はニヤッと笑った。
「ききたい?」
「うっ、やっぱいい。聞きたくない。恥ずかしくて死んじゃう」
ちくしょう。やっぱし何かしたんじゃないか。
ぼくが怒ってるのも知らないで彼はゴキゲンだった。シャワーでぼくの体を洗い流してくれながら鼻歌なんか歌ってやがる。
あっ!?
「そこはいいって!」
「だめだよ。ちゃんときれいにしとかなきゃ。後で辛くなるの絢都なんだからね」
「いいってば〜。自分でするから」
「自分で洗えるの? 入れたことあるの?」
うっ! それはっ‥‥。
「ほーら。ぼくに任せて」
そう言って奏路はぼくを後ろ向かせ、シャワーの温かい湯を当てながらゆっくり指を入れてくる。
あ。
ぼくは恥ずかしくて顔を覆った。
「もうちょっと足開いて」
「‥‥なぁっ、キタナく、ないのか」
「絢都の体はどこもすてきだよ」
ひえっ。聞いたぼくがバカだった!
「ここも‥‥ぼくを受け入れたって、とってもきれいなままだよ」
奏路はそこを丹念に洗い流す。それって“あばたもえくぼ”ってやつじゃないのかな? そこはどう考えたって排泄するトコロなわけだし。
「恥ずかしい‥‥よ、奏路。もうやめてくれ」
やだな‥‥。なんで、気持ちいいんだろ。
「うん、終わった。‥‥! 感じちゃったの‥‥?」
彼はぼくの異変に気付いて背後から手を伸ばし、変化したぼくをそっと手のひらに包んだ。
「絢都、鏡みてごらん」
言われてぼくは、それまで見ないようにしていた鏡を見てしまった。

「ほら、絢都の気持ちイイ顔‥‥」
そこに映っているぼくは自分じゃないみたいだった。ぼくはこんな顔したことない‥‥。
鏡に映るように後ろから首筋に口付ける彼。
「首‥‥胸、わきばら、腰」
ぼくを握っている手とは別の手で、言葉にしながらそっと触れていく。その手がそこで重なる。
「絢都」
ああ‥‥ンっ。
彼の手つきはいやらしさを増してぼくの全身を撫でまわした。
触られる快感に腰をくねらすこれは‥‥ぼくなのか? ふいに体の奥がジン、と疼いた。
‥‥ほしい。何かを。
「奏路‥‥っ」
何とかしてっ!
「指じゃ、足りないでしょ」
奏路がぼくの耳を噛みながら言った。
「絢都の体、準備オーケーみたい‥‥」
ふあっ‥‥。
そこに何かが当てがわれた。彼は横向きに体勢を変えさせ、鏡でぼくにもそこが見えるようにした。
当てがわれていたのは、彼の‥‥。
「すぐに入っちゃうね、ほら」
やっ、あっ!
水分を含んだ、すごくエッチな音がする。
はぁっ‥‥。
熱に浮かされていく。
ぼくは頭を支えきれず、ガクリとしなだれた。
「ちゃんと見て。ぼくたちがどうなってるか‥‥」
「‥‥?」
鏡の中にいたのは、彼のを含んで満足そうな顔をしてるぼく‥‥。ぼくたちがしてるのは、けっしてじゃれ合いなんかじゃなかった。
バスタブについた両手で体重を支え、無防備な腰は彼にがっちりホールドされている。
「エッチ、してるんだよ」
奏路は優しく囁いて後ろから抱き締めてきた。
お互いの肌に挟まれている水滴が、表面張力でふたりをより密着させる。彼の肌が吸い付いてくる。
んあッ、あ。
「動かし‥‥て‥‥」
堪らずぼくが背をのけ反らせて奏路を求めると、彼はすぐに与えてくれた。
何度目かの挿入でこすられた時、ぼくは彼の手の中に射精した。
奏路は、息を切らして項垂れるぼくを支え、体位を変える。ソコに彼のを入れたまま、だ。
ぐりんと回され、膝乗りの格好でぼくたちは向かい合う。
「さすがにまだ少ししか出ないか」
彼は、ぼくが今出したものをわざわざ見せてくれた。ほんとに、ぼく何回イかされたんだろ‥‥。
ぼくは彼にもたれかかった。どうしても自力で体を立てていられない。
ぼーっとする頭を彼の肩に預けて、ぼくは彼の耳元にどうにか言葉を届けた。声にする力も出なかったんだ。
「‥‥そ、じも‥‥イきそ?」
「うん‥‥」
奏路が応えてぼくを抱き締める。体位を変えた時から、ぼくの中で彼の嵩が増してた。
「イって‥‥。ここでいいから」
ぼくは彼に、ぼくの方からキスをした。すると彼は驚いたように目を見開いた後、ほわっとする笑顔を投げてよこしたんだ。そのキスの意味に、気付いたみたいに。
「きみにあげる言葉が見つからないよ。大好き、絢都」
甘ーいキス。
ぼくも‥‥だよ‥‥。
んあぅ‥‥っ、ん、あ!
「イクよ、絢都っ」
うんっ‥‥!
友達として好きとか、それ以上に好きとか、そんな境界線は考えてる以上に曖昧なものなのかもしれない。
だってこうして‥‥ぼくは彼を許してしまっている。
ぼくたちはセックスフレンドじゃないから“友達だってエッチくらいするんだろ”なんて、キスやハグと同じようには言えないけれど‥‥。
きみがぼくにとってなくてはならない存在だと認めた時から‥‥いや、もっと前、きみにはじめて助けられた時から‥‥たぶんぼくは、きみを受け入れてた‥‥。
そう想いを込めてぼくは奏路の首に腕をまわした。
前に奏路は言った。「誰にも受け入れてもらえなくても、だからこそ自分を偽ったりはしないし、したくない。こんなぼくでごめん」と。
ポリシーを持ってるって、さいこーにかっこいいよな。
ぼくは事故で人の助けなしでは生活できない体になってしまった。人に迷惑をかけてしまう自分が許せなかったぼくを、奏路が「いい」と言ってくれた。
彼の至れり尽せりには、はじめ嫌悪していた。けれど慣れてしまえば、甘えずにはいられない‥‥。彼のこの腕に、すがらずにはいられない‥‥。
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