SWEET-躊躇いと純情-
-The hesitation and the pure heart- Field of love.
(10)
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朝ご飯がとても美味しかった。運動の後だからか‥‥?
「なあ、今日部屋にいよ。どこも行く気力ない。体力もない」
ぼくは食後のダイニングテーブルに上半身を投げ出した。
「賛成。てか、ベッドに入れてもらった時言った」
奏路は応えながら手際よく食器を片付けている。
そういえば「いかなーい」なんて駄々こねてたな。
テーブルに突っ伏して見ていたテレビでは天気予報をやっていた。
「明日も晴れだってー。明日連れてってな、絶景ポイント」
「うん。そういえばさ、一時期に比べたら発作ずいぶん減ったんじゃない?」
「そういえば‥‥だね。奏路とケンカしてた時がいっちゃんひどかったな」
考えてみたらここ一ヵ月で3回しか起きてない。あの時期は一週間に4回くらい平気で起きてたのに。
「あれはケンカじゃないでしょ」
奏路が笑う。
「そだっけ?」
「そうだよ。絢都が一人になりたいって言うから会わなかったんじゃん」
「えー? ぼくを怒鳴りつけて出てったの奏路だったよ」
「あー‥うん。でもケンカじゃあなかったよ」
そうだった。彼はぼくに現実を教えてくれたんだった。
「結局ぼくの発作って心因性によるのもあるのかもしれないって医者が言ってたな。精神科でも同じ風に言われたし。‥‥ありがと」
奏路が片付けを終えて、コーヒーを淹れてきてくれた。二人ともブラックなんだ。うーん、いい香り。
「ストレスで発作起きちゃうってこと?」
「そうみたいだな。最近はストレスらしいストレスなかったし」
奏路は自分の分のコーヒーをテーブルに置いてぼくの背後に回りこみ、ふわりと抱きついてきた。
「奏路?」
「‥‥もし、きみの体が完全に治ったなら‥‥ぼくは必要なくなる?」
「‥‥どうして、そう思うんだ」
ぎゅっと、腕に力がこもる。
「ぼくのこと邪魔にならない? きみにべったりくっついて世話してしまうぼくがウザくならない?」
奏路、ぼくがきみの助けが必要な体だからきみをそばに置いてるなんて思ってるのか? ばかだなぁ。
「べったりにはもう慣れたよ。それに奏路はぼくを逃がさないんじゃなかったのか」
「逃がしたくない。離したくないけど‥‥」
「なあ。ぼくにはもうきみのいない生活なんて考えられないし、だからきみはぼくの人生の一部になってしまってると思うよ。自分の人生が必要なくなるわけないだろ」
「絢都ぉ」
ぼくは気弱にぼくを呼ぶ奏路に、はっきりとした愛しさを感じていた。
「よく聞いてくれよ奏路。たとえ体が完治したとしても、ぼくはきみに甘えていたい。‥‥ぼくらはずっと精神面で持ちつ持たれつの関係だったんだな。奏路が自分に嘘をつかずにぼくに体当たりしてきてくれたから、ぼくはきみを理解できたし、心から許せたんだ。そしてきみを好きになった」
「‥‥友達として?」
「今更何言ってんだ。友達なんか超えちゃったよ! ぼくの心にも体にもあっという間に入り込んできたくせに。自分で言うけどぼくは結構ひどい人見知り体質なんだぞ。恋愛感情でも持ってなきゃぼくが体開いたりするはずないだろ。いや、多少きみが強引ではあったけどさ。行為がいやじゃなかったのは奏路だからだよ」
ぼくは奏路の腕に手を添えた。
「ホントにそう思ってくれてるの、絢都」
「本当だよ。ぼくに美味いメシ食わせてくれよな」
「‥‥うん!」
「コーヒー冷めちゃうよ」
「うん」
奏路はニコッとほほ笑んで椅子に座った。
「奏路はぼくが離れてくって思った?」
「ぼく‥‥この性格のせいで何度もふられてるからさぁ」
そう言って彼はコーヒーを飲む。
「きみが何度ふられたか知らないけど、ぼくはきみの性格に何度も助けられたよ?」
彼がゆっくりカップをテーブルに置いて言った。
「絢都って、もろにぼくのタイプなんだよねー」
「もろなんだ」
ぼくは笑う。
「じつはぼく、絢都のこと就職試験から見てた」
えっ!?
「面接の時にね、外見がタイプで気になってたんだ。一緒に入社できて嬉しかったなぁ。なかなか知り合う機会がなくて、今年の夏にチャンスが巡ってきたんだよね」
それが、ぼくがはじめて発作を起こしたあの日だったってことか。
「絢都は社内では浮いた話を全く聞かない人だった。ぼく以外にもきみを狙ってる人は男にも女にも結構いて、高嶺の花みたいな存在だったんだよ。知ってた?」
「え、そうなの? 会社にいた3年間できみ以外に好きなんて言われたことなかったぞ」
彼はふっと笑む。
「絢都はもてるのにどこか近寄り難い雰囲気まとってるから、接近する人はあまりいなかったはずだ」
「ぼくがもてたなんてウソだぁ」
「うそじゃないよ。みんなきみには優しかったでしょ。今でもそうだし」
そういえば‥‥そうだったのかも‥‥。
「ぼくって人見知りしすぎて周り見えてなかったのかな?」
「容易に他人を寄せ付けない孤高さが絢都の魅力なんだよ」
そう言って彼はぼくの髪に触れる。
「きみが事故に遭ったって聞いたときはショックだった‥‥。戻ってきてくれて、嬉しかった」
その手が頬に触れる。
「きみを好きでいてよかった‥‥」
その目に見詰められる。
こんなに近くにいるのに気分が悪くならない人間も珍しい。おまけにぼくは体まで許してしまっている。
「奏路がふられ続けてきたのはぼくに会うため、なんて都合良すぎかな」
ぼくは自分のご都合主義な発言に自分で気後れしてしまったけど、奏路は「そうかもね」と言ってほほ笑んだ。そしてちょっと嬉しそうな顔をして続けた。
「じゃあ絢都が人見知りなのもぼくに会うため、だったんじゃない?」
「そりゃ都合良すぎー」
奏路がぼくの口からイエスと言ってほしいことがわかって、ぼくは茶化す。だってこんなこと言われたら果てしなく照れるだろっ。
「でもぼくたちは。」
「‥‥ぼくたちは」
彼の真剣な眼差しに見詰められて、彼の言葉を思わず繰り返した。
「ぼくたちは今、こうして‥‥」
奏路の唇が言葉を紡ぐ。ぼくの耳に優しく届く。
今、こうして‥‥一緒に居る。
‥‥なんかキスしたくなってきた。
奏路も? ‥‥うん、しよ。
ぼくは目を閉じる。
お互いの舌に残るコーヒーの苦味さえも、ぼくたちには甘くて。
唇を離してふたり同時に息を吐き、見詰め合う。
「そうでしょ、絢都」
「‥‥うん」
ぼくたちはおでこをくっつけ合ってほほ笑んだ。
ぼくたちは出会い、お互いを必要とし、お互いのために一緒にいるんだ。
確かめたぼくのこの気持ちは、きみと同じラヴの領域に入ってしまっていて‥‥もう戻れないだろう。
ぼくは奏路が好きなんだ‥‥。
─終─
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◆◇◆ あとがき
どうも、こくうです。ここまで読んでくださってありがとうございます。
なにやら長いタイトルですが、「SWEET」以外はサブタイトルですので。わはは。(タイトル定められず、思いつきを全部くっつけてしまいました)
なにが甘いのかは、まぁ読んでのとおりです。作風甘すぎ。相変わらず語彙足りねー。まったく成長してないですね私。唯一成長してるのはラブラブ加減?
今回は“二人の世界”を意識して書きました。てか、私の一人称作品みな例外なく二人だけの世界醸し出してますが…(汗)
それから今作も異常なくお食事シーンがあります。なんか私にとって「メシ=ほのぼの家庭」が成り立ってしまってて…。
「あー、エッチも書けてよかったぁ」と、脱稿した時に思いましたw
設定が設定だっただけに(片割れが体に異常有りですもん)エッチまで行かず終わりそうだったのを何とかど根性で(私のくだらない妄想含むw)引っ張りました! 引っ張りすぎて作品自体が長くなってシマタヨ。( ̄▽ ̄*)
スミマセンヌ。
今回のエッチの描き方、自分的にかなり楽しかったです。 あえて動作を表現せずに絢都の語り(あえぎ?)だけで済ますっ!
自分で書いてて笑いましたねー。「ぎゃーーー!!」だもん。(o_ _)ノ彡☆バンバン
これを書こうと思ったのは、ある日寝る前に思いついた「眠る下半身」という一言が印象的だったからなんです。さっそくメモってイメージを膨らませ、次の日から書き始めました。キーワードは絢都が奏路の部屋の前で暴れてた時に使ってます。
それではこれにて。黙読多謝<(_ _)>
2005/02/17
こくう 拝 後書き長すぎ。 テヘッ。
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