レゾンデートル

〜 天の羽衣 〜

(10)




3、羽衣(ハゴロモ):満たし合う存在の至福




  †…†…†




 道から水が引いて交通が戻り、人々は働きをはじめ、地祇は日常に戻っていた。

「おい、ヒサシ! 寝てんのか」

 翌日、シンカはヒサシの家の扉を叩いた。扉は施錠されていた。

「おーい」

 シンカは回りこんで窓から部屋の中をのぞいてみたが、人の気配はないようだった。

「いねーのか? どこ行っちまったんだよ」

 後ろにいたフーガがシンカに寄り添う。

「あの人と…行っちゃったのかな」

「それなら一言二言あったていいのに」

「ヒサシは淋しがりやだから…」

「それはオレだってわかってるつもりだけど。…やっぱ居ねーや。ちくしょう挨拶もなしかよ、友達甲斐のねえやつだぜ」

 シンカもフーガも、人一倍寂しがりのヒサシがいとこという人と行ってしまうなら、別れぎわに自分たちに会いには来ないだろうと予測はしていた。わかっているからこそ、少しだけ愚痴ってみたのだった。

「ヒサシが幸せならいいね」

 そう言ってフーガはほほ笑んだ。

「そうだな」

 シンカは目を伏せ、思いを噛みしめるようにほほ笑んだ。

 穏やかな風が、二人をいたわるように吹いていた。






  †…†…†




 レインツリーの枝には、ヒサシの纏布がからまり風にたなびいていた。

 湖畔でみそぎをする天女の羽衣さながらに…



























.....THE END.....



ページ進行
 10・後記


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.†.†.†..後記 ..†.†.†.


こんにちは、こくうです。
読んでくださりありがとうございます。
この話は2002年に発表した「レゾンデートル〜天の羽衣〜」を修正したものです。元が結構な読みにくさだったのを改善してみました。
元のに比べればいくぶん読みやすくなっているかと思います。…読みやすくなってるといいなあ(!)。

さて、なぜ3年も経った今になって書き直したかと申しますと、2005年12月現在私は深刻な停筆中だからなのであります(泣)。
どうにも書けない。 なぜなのぅー!? どうにか感覚を取り戻したひ。進まなきゃ。そう思ってトライしてみました。…結果はご覧のとおりで微妙ですが。

書き直してみて思ったのは、2002年の私にしか書けなかった文章に2005年の今の私の文章を加えたら、かなり内容が分かり易くなった、ということでした。2002年バージョンでは満足していたものが、まだまだだめなものだったんだなと思い知りました(笑)。
2002年バージョンをお持ちの貴重な方、もしどちらも読まれましたら、私の3年の成長っぷりが垣間見れるかもしれませんですよ(笑)。

この話は個人的にとても気に入っていて、私の作品すべてのベースになるものを多く含んでいます。この話を書けたから、物書きの私がいるんだなと思えます。
もしかしたら、私の書く話は自分しか満足させられないものかもしれない。本当は私が物書きとして伝えたいことはないのかもしれない。
私の創作活動は、ただ私の欲求を満たすためにあるのかもしれない。だから書かずにはいられないのかもしれない。そんな思いがいつもあります…。
今は書けない苦しい時期だけど、またきっと書けるようになる。私の欲求はまた生まれてくるはずだから。


                              2005,12 白夕こくう 拝


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