あのあと一重に根掘り葉掘り訊かれて大変な目にあった。あたしはぼんやりしながら一重の言葉に耳を傾けている。
「でもさー、さっきも思ったんだけど紗綾と日下先輩って並んでても違和感ないんだよね」
どういう意味よ?
「なんかどっちも出来がいいから、二人がいるだけでホウ・・・って感じよ」
どんな感じよ(笑)
「でもまさか、紗綾が一目惚れしちゃうなんてねー。母上さま、大喜びだったんじゃない?」
「想像通り。ただ相手が日下先輩じゃなくてガッカリしてたけどね。あたし自身驚いてるんだから」
「紗綾らしいよね。よく知ってる先輩のあまり見かけない格好に一目惚れなんてさ。それにしてもうらやましい!日下先輩と相合い傘だよ〜」
「それ言わないでよ、不本意なんだからっ」
それに相合い傘って言ってもほんの一瞬だったし。
「不可能をノリで可能にする女、園生紗綾17歳!あたしなんか日下先輩の近くにいるだけで気絶しそうになるのに。紗綾ってやっぱ変わってるよ。あの美しい顔に全っ然動じないもんね」
一重は机に両肘をついて、組んだ手の甲にあごを乗せてあたしを覗き込んだ。
「うーん、キレイだとは思ってんだよ。でもそれだけなんだよねぇ、ドキドキもしないし。話せば面白い人だったけど。あっそうそう、日下先輩が、翼空先輩にはかなわないって弱音吐いてたよ」
「日下先輩が弱音?聞き間違いじゃないの?」
「一重がそう思うのはいいけど、あたしには弱音に聞こえたよ」
「あ〜っ紗綾、校庭見てみ!日下先輩サッカーやってるよ。あ、かわした!上手〜い」
ハイハイ。あれ、翼空先輩もいるじゃん!?
――・・・どこにいてもすぐ見つけられる・・・いつも姿を探してる。こんなこと、今までなかった・・・。
「ちょっと、永瀬先輩も上手いねぇ」
一重も翼空先輩に気付いた。
「うん・・・。って、日下先輩、上履きじゃん?あれ」
「先輩なら許されるー」
いいなぁ、翼空先輩・・・。
「キャーッ、シュート決まった!かっこいい〜!・・・紗綾、見てなかったの?」
「なーんであたしが日下先輩見なきゃなんないのよ。それより早くあと2時間終わんないかなー。部活行きたい」
場の雰囲気を一気に盛り下げたあたしに、一重は苦笑した。
「紗綾だねー」
気持ちが弾む。心が躍る。
あの人を見るだけで、わけもなく笑顔になる。
「紗綾!」
ともえ先輩のオープントス。正確に上がる。踏み込んで跳ぶ。気持ちよく・・・!
ボールの中心を叩き落す。叩いた瞬間に決まったと感じる。いい感じ!
「紗綾、高い〜!」
「トス上げるほうも気持ちよかったよ、今の」
「ノッてるじゃん」
先輩たちに頭を叩かれる。褒められるときはいつもこうだ。
「えへへっ」
やっぱバレー好きだなぁ。翼空先輩と同じことやれてるんだ。ちらりと盗み見た隣のコートでは、男子がフォーメーションの確認をしていた。
翼空先輩の真剣な表情。今日はメガネをかけたあたしだけの翼空先輩ではないけれど、やっぱり先輩の周囲だけまぶしい。
「よーし、集まれ」
監督がみんなを呼び集める。
「明日は男子と練習試合をするぞ」
「わっ、久し振り!」
うちの学校の男女バレー部は、年に4回練習試合をしてるんだけど、これがちょっと変わってる。まず男女両チーム対抗で3セットマッチをした後、男女混合チームを作って3セットマッチをするんだ。みんな結構楽しみにしてる季に1度のイベントなんだ。
「メンバーは明日発表するぞ」
「楽しみ〜」
「それからー、明日はスペシャルゲストが来る」
スペシャルゲスト?
「誰ですかー?」
なんか今、いやそれより、予感したけど・・・。もしかしたら翼空先輩とチーム組めるかも知れない。ああ、いっしょにバレーしたいなぁ。
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