バスが来て生徒たちを運んで行った。
「おまえ何してんの。今のバスに乗らんかったの?」
気付けば目の前に、自転車に乗った日下先輩がいた。バス、乗れなかった。どうしても。
「先輩・・・、翼空先輩、彼女いるでしょう・・・?」
無言は肯定だ。
「先輩は知ってたんですよね・・・。なんで教えてくれなかったんですか」
初めて恋して一人で舞い上がって・・・恥ずかしい。たった2日で失恋かぁ。
「・・・オレ言ったじゃん。自分で確かめろって」
「言ったけど!太刀打ちどころか想いも伝えられないなんて・・・。あたし凪先輩キライになれないもん」
「おまえはどうしたいんだ?」
「どうって!?諦めるしかないでしょう!?」
「・・・彼女がいるからって、ドキドキは止まったか?」
あたしは首を振った。
「好きなやつに相手がいても想ってるやつなんて、いくらでもいるだろ。相手がいるから諦める、そんな簡単なキモチじゃねぇだろ、恋って」
先輩の声と言葉が、じんわりと心に染みてきた。
・・・うん。相手が凪先輩で太刀打ちできなくても、この気持ちは変わんない。
日下先輩の恋愛教室では、いろんなことに気付かされて教わる。やっぱ教師向いてるんじゃない?
「・・・恋って・・・いつかは冷めるのかなぁ」
そう願うしかなくても、あたしの恋はまだ翼空先輩にある。失恋したけどまだ恋してる。
「乗ってく?」
先輩が親指で後ろを指した。あたしはスポーツバッグを先輩に渡した。
日下先輩、何だかんだ言って、あたしにも優しかったんだ。なんか、心が軽くなった。
「先輩って変ですよね」
「おめーよかマシだ」
あたしのボヤキが聞こえたらしく、先輩はムッとした声で返してきた。笑っちゃう。先輩、変。
「先輩も失恋したけどまだ恋してるんですよね・・・?仲間ですね。失恋同盟です」
「なんかそれやだなァ。オレのプライドが」
「今さら?」
実はあたしと日下先輩って気が合うのかも。
「おめー笑ってっけど、オレは望み捨ててねぇよ?おまえ雨の日に言ってたろ、その人もいつか気付いてくれるって。それにオレが好きなやつ、まだ彼氏いねぇんだよねー」
そういえばそんなこと言ったかも・・・。あたし先輩に助けられてばかりじゃなかったんだ。よかった。
「じゃあ片思い同盟に改名します」
「えー?・・・ま、いっか」
いいなぁ、この人。
「それよか先輩、なんでバレーやってないんですか?あんなに上手いのに」
「なに、オレのプレーに惚れた?」
「先輩なんかに惚れませんっっ」
ホントは憧れちゃったんだよね。あんな風にプレーできたらって・・・くやしくて、でもすごく上手くて、キレイで・・・。
「つめて―なァ。そろそろ認めたら?オレのこと嫌いじゃねーだろ?」
「うーっっ、好きではないですっ」
「なんて強情なんだ」
どうせ強情だよっ、意地っ張りだよっっ。
「先輩こそ、なんであたしに構うんですか」
「!?・・・失恋すんの、知ってたからよぉ。同盟だろ」
日下先輩がニヘヘッと笑う。
「仲間・・・ですね」
「仲間、だな」
こうして、あたし園生紗綾と日下千尋先輩の変な交友関係は始まった。今後あたしたちがどうなっていくかは、神のみぞ知る・・・?
きになるあのこ 後編 終わり
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