きになるあのこ 後編(7)



 バスが来て生徒たちを運んで行った。

「おまえ何してんの。今のバスに乗らんかったの?」

 気付けば目の前に、自転車に乗った日下先輩がいた。バス、乗れなかった。どうしても。

「先輩・・・、翼空先輩、彼女いるでしょう・・・?」

 無言は肯定だ。

「先輩は知ってたんですよね・・・。なんで教えてくれなかったんですか」

 初めて恋して一人で舞い上がって・・・恥ずかしい。たった2日で失恋かぁ。

「・・・オレ言ったじゃん。自分で確かめろって」

「言ったけど!太刀打ちどころか想いも伝えられないなんて・・・。あたし凪先輩キライになれないもん」

「おまえはどうしたいんだ?」

「どうって!?諦めるしかないでしょう!?」

「・・・彼女がいるからって、ドキドキは止まったか?」

 あたしは首を振った。

「好きなやつに相手がいても想ってるやつなんて、いくらでもいるだろ。相手がいるから諦める、そんな簡単なキモチじゃねぇだろ、恋って」
 
 先輩の声と言葉が、じんわりと心に染みてきた。

 ・・・うん。相手が凪先輩で太刀打ちできなくても、この気持ちは変わんない。

 日下先輩の恋愛教室では、いろんなことに気付かされて教わる。やっぱ教師向いてるんじゃない?

「・・・恋って・・・いつかは冷めるのかなぁ」

 そう願うしかなくても、あたしの恋はまだ翼空先輩にある。失恋したけどまだ恋してる。

「乗ってく?」

 先輩が親指で後ろを指した。あたしはスポーツバッグを先輩に渡した。

 日下先輩、何だかんだ言って、あたしにも優しかったんだ。なんか、心が軽くなった。

「先輩って変ですよね」

「おめーよかマシだ」

 あたしのボヤキが聞こえたらしく、先輩はムッとした声で返してきた。笑っちゃう。先輩、変。

「先輩も失恋したけどまだ恋してるんですよね・・・?仲間ですね。失恋同盟です」

「なんかそれやだなァ。オレのプライドが」

「今さら?」

 実はあたしと日下先輩って気が合うのかも。

「おめー笑ってっけど、オレは望み捨ててねぇよ?おまえ雨の日に言ってたろ、その人もいつか気付いてくれるって。それにオレが好きなやつ、まだ彼氏いねぇんだよねー」

 そういえばそんなこと言ったかも・・・。あたし先輩に助けられてばかりじゃなかったんだ。よかった。

「じゃあ片思い同盟に改名します」

「えー?・・・ま、いっか」

 いいなぁ、この人。

「それよか先輩、なんでバレーやってないんですか?あんなに上手いのに」

「なに、オレのプレーに惚れた?」

「先輩なんかに惚れませんっっ」

 ホントは憧れちゃったんだよね。あんな風にプレーできたらって・・・くやしくて、でもすごく上手くて、キレイで・・・。

「つめて―なァ。そろそろ認めたら?オレのこと嫌いじゃねーだろ?」

「うーっっ、好きではないですっ」

「なんて強情なんだ」

 どうせ強情だよっ、意地っ張りだよっっ。

「先輩こそ、なんであたしに構うんですか」

「!?・・・失恋すんの、知ってたからよぉ。同盟だろ」

 日下先輩がニヘヘッと笑う。

「仲間・・・ですね」

「仲間、だな」







 こうして、あたし園生紗綾と日下千尋先輩の変な交友関係は始まった。今後あたしたちがどうなっていくかは、神のみぞ知る・・・?





きになるあのこ 後編 終わり


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《きになるあのこ 後記》

本の発行日:2002/11/18

 ・・・お恥ずかしい限りでございます。『ほほえましい』という感想を賜ったことのある「きになるあのこ」でした。
 元ネタは1999年にできたものです。バレーボールのルールが変わる前でした。あの時俺は若かった(笑)

 この作品のテーマは「ありのままの自分で」でした。楽しみながら書く事が出来た作品です。
紗綾が暴走気味で(笑)千尋は勝手に絡んでくるし・・・でも積極的なわりにはちゃんと告白してないところがかわいいっすね。
彼はきっと紗綾の口から言わせたいんでしょうね。しかし紗綾ってば強情だからねぇUu 千尋の前途は多難。
あっ、千尋の好きな人が誰か分かりましたよね?ここを読めばハッキリ分かるはずです(笑)
 書き終わったばかりの頃は翼空と海音の話も書きたかったなぁと思っていましたが・・・書けるときに書くかもしれません。

 黙読感謝。

★「きになるあのこ」に合いそうな曲。
 ・DREAMS COME TRUE→「go for it!」
 ・高橋克典→「君のKissしか欲しくない」
   ……こんなイメージで書いてました(笑)


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