きになるあのこ 後編(5)



「園生ちゃん、お手柔らかにね」

 翼空先輩の微笑が目の前に・・・!赤面っ!

「男子相手に手抜きなんてできないですよー」

 ああっ、ドキドキの心臓、どうにかしてぇっ!

 その時チラリと、ベンチでふんぞり返っている日下先輩が目に入った。なんか今、ニヤけてなかったー?ムカーっ。あたしの慌てた姿見て笑ってんだ。一日部員のくせに、態度でかすぎ!

 ・・・なんか落ち着いた。

 試合は女子のサーブから始まった。さすがは男子。きれいなサーブレシーブでセッターへ送り、レフトのオープン攻撃がブロックの間から抜けてきた。あき先輩がレシーブ。お互いに様子見から入る。ライトに上がったトスをなつき先輩が打つ。確実に捕球される。どっちに上がる?下がってるのは翼空先輩。ライトだ。翼空先輩の足とボールの動きを見てあたしはブロックに跳んだ。

 手応えあり!ボールは吸い込まれるように翼空先輩の足元に弾んだ。

「ナイス、紗綾!」

 一枚ブロックで止めちゃった・・・。

 あたし止めちゃったよ、翼空先輩をっ。すごーい!でもこれで、男子も本気になるだろうな。だからあんまり調子に乗りすぎちゃいけない。

 男子が調子を上げる前に、第1セットは女子が逃げ切った。

 男女対抗は、終わってみればセットカウント2対1で女子が負けてしまったけれど、勉強になった試合だった。フォーメーションの穴とか戦術とか、経験を積まなきゃ学べないことってたくさんあるから。上手い人と戦うって、いいことだよ。

「よぉし、20分休憩」

 休憩後、混合チームの発表があった。まずAとBの各チームに分けられて、チームでスタメンを決める。あたしはAチームで、なんと翼空先輩と一緒だった。ラッキー!でも、日下先輩もいるのはなぜ・・・?

「園生ちゃんと一緒でよかった」

 翼空先輩が話し掛けてきてくれた。試合中は治まってたのに、急にまた心臓が騒ぎだした。そういえばさっきは日下先輩を見たらドキドキ止まったんだよね。

「はいっ、あたしもです」

「てめー、オレは無視かよ」

「あれ、日下先輩いたんですか」

 翼空先輩が笑っている。

「何、オレと一緒じゃ不満?」

 日下先輩の据わった目も、昨日今日でもうへっちゃらなんだい。綺麗すぎて迫力ある先輩に、あたしはこっそり耳打ちした。

「先輩、翼空先輩の足引っ張らないでくださいね」

「・・・おめーこそ、オレの足引っ張んじゃねーぞ」

 日下先輩もこっそり反撃をくれた。

 ・・・不思議。日下先輩がいるとドキドキしない。あたしって、よっぽど日下先輩が嫌いなんだ。

「紗綾ぁー」

 えり先輩があたしの両肩に手を乗っけてくる。

「えり先輩よかったですねぇ、日下先輩と一緒で」

「紗綾って、日下くんと話してても何ともないの?あたし本気でヤバイかも」

 えりせんぱいが日下先輩に弱いっていうのは部内では有名な話。近くにいるだけでドキドキして落ち着かなくなるんだって。まるで翼空先輩を見たときのあたしみたい。恋してるんだぁ。

 Aチームのスタメンは混合のベストになった。女子はセンターにえり先輩、バックライトにあき先輩、レフトにあたし。男子はセッターにしのぶ先輩、ライトに翼空先輩、そしてなぜかバックレフトに日下先輩。

 ・・・日下先輩、大丈夫なのかな?



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