FELLOWS! 秘話




「夢の中で」(第二話、シャスの宿にて)





















































































 



「夢の中で」(第二話、シャスの宿にて)







オレは、揺れる感覚で、気がついた。

まだ眠くて目を閉じていたけれど、誰かの息づかいが聞こえていた。

体の芯がぼうっと熱くて、頬までほてってきて、オレは体を震わせた。

キモチよくて…すごくよくって…



オレの中に、誰かが入ってるみたいだった。



なぜそう思ったのかは分からない。



オレには生来、ないはずのそこに、固くて太くて…熱いものが出たり入ったりしてる。

そのキモチいいモノに、オレは揺すられていた。

オレはすごく感じていて、ぐしょぐしょに濡れていて…やけに卑猥な音が、

揺れるリズムに合わせて聞こえてきた。

「あぁ…っ」

ため息に似た甘い吐息がオレの口からもれて、

オレはもっとキモチよくなりたくて…。



オレは…誰とつながってるんだろ…?



うすく目を開くと、短く刈り上げた薄い茶髪と印象的な金色の瞳が、

爽やかに、でもすごく優しく…オレを見ていた。

…ユン兄ちゃん…っ!


見られた! こんな姿!!




そこでハッと目が覚めた。

──…夢っ?

外はまだ暗く、隣のベッドにはジェイが眠っている。

…シャスの宿だ。

やべーよ。夢精してる…。

時刻は午前三時だった。

オレはユニットバスへと立った。下着を洗って、とりあえず干しておく。

ふぅ、と息を吐き出し、ユニットバスの壁にもたれかかった。

…まだ、ドキドキしてる…。

すげー…夢…。

あれはオレとユン兄ちゃんだった。ユン兄ちゃんと、女のオレが、…、してた…。



二十歳になった日に、なんで、こんな夢見ちゃうんだよ…。

こんなこと絶対ありえないのに、ありえないほど鮮明で。

…印象も、感覚も。

まるで本当に、そこにユン兄ちゃんがいたみたいに。

ユン兄ちゃんを、オレがソコで受け入れた感覚が、熱く残ってる…。

オレは下腹部を優しく撫でた。

──…すごく、気持ちよかった。

「…っはぁ…っ」













「夢の中で」・・・・・・・ end ☆

 


↑モドル





>>FELLOWS! 番外編

「たとえばおまえが、ほどいた髪をそよがせ、光の中に佇んでいたとして」(ジェイ・独白)

「金色に込められていた思いが、青色に受け継がれて」(アーティア・独白)



































































































 



「たとえばおまえが、ほどいた髪をそよがせ、
              光の中に佇んでいたとして」
(ジェイ・独白)







同じ日の繰り返しなんかなかったよ。



おまえが生まれて、毎日が知らないことばかり。わからないことだらけだった。

戦争のようだった。慌しく、苦労も気苦労も、これでもかというほどあった。

疲れ果て、だけど「いやだ」と投げ出したくならなかったのが不思議なほどだ。



本当は、俺は、おまえにかかわらなくてもよかったんだ。

ドーティスもミハイルも、最初から俺を巻き込もうとはしていなかった。



おまえにかかわっていくことを、俺は自分で選んだ…。



全身全霊が叫んでいた。

「そばにいたい」って。



ただの赤ん坊に、だ。

笑ってしまうよな。



おまえの成長は俺のよろこびだった。ドーティスの鳩便を受け取るまでは。





「アーティアの遺伝子に異常が見つかった」



深い闇に突き落とされた気分だった。

めまいがして吐き気がして。激しい絶望感というのは、鼓動を止めかねない。あぶなかった。



…俺はおまえの元を離れた。

本音をいうと、片時だって離れたくなかった。だけど、先を見て…先を見て。

そして俺はユングフラウからジェイになった。



異常を起こしたおまえの遺伝子の一部が、俺の中には組み込まれている。

俺はおまえにしか反応しない剣になったんだ。



離れていた時、一度だけおまえに会ったことがある。

あの雨の日、おまえは、濡れていた俺に傘を貸してくれた。…子供用だったけどな。

雨のせいでなく、視界が潤んだ。

もうおまえには俺がわからないんだ、と思った。

涙があふれた。

もっと抱っこも高い高いもしてやればよかった。

思いっきり甘やかして…そして…っ







「愛している」





口から出かかった言葉をのみこんだ。

言葉にしてしまったら、辛くなる。今はまだ。…俺は堪えた。



俺はこのまま、おまえに忘れられて生きていくのか…?

いや、そうじゃない。見失っちゃだめだ。

今はまだ言えないけれど、いつかきっと、おまえは俺を知る。





アーティア。

すべてを知ったら、おまえは俺を罵るだろうか。



何度も自分をあざ笑ったさ。

…ふつうじゃないよな。おかしいよ。

甥だぜ? しかも遺伝的には姉貴と全く同じなんだぜ。

だけどこれは、姉貴には感じたことのない感情だった。

俺は、誰よりおまえを愛していた。



ミハイルを捜す旅を続けている今も、俺の気持ちは変わっていない。

それどころか、日々いとしくなる…

早く俺に気付いてほしいと願うけれど、まだ言えない。

問題を先送りしてるだけかもしれない。わかってるのに、踏み出せない。



簡単に言えるわけないじゃないか!

体の時間が止まる、なんて。



残酷だ。



・・・・・

いつ絶えるとも知れないこれからの長い、永い時間。

おまえを一人にするなんて、俺にはできなかった。

笑いたいなら笑えばいい。

俺がおまえのそばにいるのは、俺のわがままだ。

俺は勝手におまえのそばにいてやる。

おまえが離れたいなんて思わないくらいに入り込んでやる。



自信があるんだ。

この世界で一つだけ、最後まで信じられる…。それは、おまえの生命。

おまえが生きていくこと。俺がおまえを愛していくこと。



おまえが俺を煙たがったってかまわない。

時間はたっぷりあるんだ。そうなったらゆっくり懐柔するさ。














「たとえばおまえが、ほどいた髪をそよがせ、光の中に佇んでいたとして」
・・・・・・・ end ☆



↑モドル


































 



「金色に込められていた思いが、
              青色に受け継がれて」
(アーティア・独白)







驚いた。

動揺も動転もできないくらい、驚いてたんだ。



ジェイが怪我して。

ジェイがユン兄ちゃんで…。

ヤツらとか、変なおっさんとか子供とか、どうでもよかった。

驚いて気が動転していたはずなのに、なぜかオレの心の表面は落ち着いていて。

あの場をしのげたのは自分でもすごいな、と思ったのは、ずいぶん時間が経ってからで。

だからあのとき、オレは驚きを体で表現できないくらい驚いてたんだ。



抱きしめられたあの温もりは、ユン兄ちゃんだった。

懐かしい匂いがした。

シャスで夢に出てきたばかりのユン兄ちゃんだったから、ふしぎな現実感があった。

見た夢の内容が内容だっただけに、オレは思い出して恥ずかしくなってしまったけど。

いつも近くにいたのに、どうして気付かなかったんだろう。なんでオレは疑いもしなかったんだろうと

自分を悔やんだ。



なんのために、どうして。ユン兄ちゃんが姿を変えなきゃならなかったのか。

なんでずっと教えてくれなかったのか。

理由をカタリナさんに聞いて。…カタリナさんもうっかり口を滑らせたみたいだったけど。

ジェイの説明で、オレは自分のことを知った。



あの時だって驚いてたんだ。

だけど、秘密をずっと隠してきて、隠せなくなって「俺が言う」って言ったときのジェイがすごく…

つらそうで。

それでまた心の表面が落ち着いていって…。

驚いてオレが取り乱す前に、ユン兄ちゃんの優しさが、オレに伝わってきたから。



ユン兄ちゃんを苦しめていたオレ自身が悔しかった。

オレのためだけに、自分を犠牲にしてしまうユン兄ちゃんが悲しかった。

けど…嬉しかったんだ。オレだけを、こんなに思ってくれていて。



オレはこの人が好きだ、と思った。…小さいころから好きだったけどさ。それよりもっと…

なんていうか…

あー、表現のしかたがわっかんないっ。なんか好きなんだよ。



この人がそばにいてくれたら、それだけでいいって思っちゃうくらい。



シララで母さんに会ってからも、母さんたちと家に戻ろうなんて思わなかった。

…戻ろうと思えなかった。



これから姿が変わらないという自分。

五年の間ジェイと旅をして、彼の変わらない姿を見てきてるオレだから。

月日が経てば、人々は、変わらないオレたちをおかしいと思うはずだ。

そんな世間体に母さんたちをさらして巻き込みたくない。母さんはやっと普通の家庭を持てたんだから。



…母さんはずっと望んでいたはずなんだ。旦那さんがいて、その人との間に生まれた子供がいて、

ていう普通の家庭を。



オレは実験で生まれた命。

これまで、それを隠して母子家庭を貫いてきた母さんには…もっと幸せになってもらいたい。

ドーティスとイリアスがいる、あったかい家庭で。



オレはジェイと旅をしようと思った。…ジェイなら、オレについてきてくれそうだったし。



後ろからジェイに包まれたとき、どうしようもなく幸せだった。

なんでこの人はオレのことこんなにわかってくれてるんだろう、って思ったら、自然に涙が出てきて。

「俺と、いよう」って…。

オレといてくれるんだ、ジェイもオレといたいんだ、ってわかってしまったら、もうだめだった。

泣くのを抑えられなかった。

オレの口から出たのは憎まれ口だったけど、それもちゃんとわかってくれてて。

ああ、本当にオレ、この人が好きだ。と思ったんだ。














「金色に込められていた思いが、青色に受け継がれれて」
・・・・・・・ end ☆



↑モドル