「金色に込められていた思いが、
青色に受け継がれて」(アーティア・独白)
驚いた。
動揺も動転もできないくらい、驚いてたんだ。
ジェイが怪我して。
ジェイがユン兄ちゃんで…。
ヤツらとか、変なおっさんとか子供とか、どうでもよかった。
驚いて気が動転していたはずなのに、なぜかオレの心の表面は落ち着いていて。
あの場をしのげたのは自分でもすごいな、と思ったのは、ずいぶん時間が経ってからで。
だからあのとき、オレは驚きを体で表現できないくらい驚いてたんだ。
抱きしめられたあの温もりは、ユン兄ちゃんだった。
懐かしい匂いがした。
シャスで夢に出てきたばかりのユン兄ちゃんだったから、ふしぎな現実感があった。
見た夢の内容が内容だっただけに、オレは思い出して恥ずかしくなってしまったけど。
いつも近くにいたのに、どうして気付かなかったんだろう。なんでオレは疑いもしなかったんだろうと
自分を悔やんだ。
なんのために、どうして。ユン兄ちゃんが姿を変えなきゃならなかったのか。
なんでずっと教えてくれなかったのか。
理由をカタリナさんに聞いて。…カタリナさんもうっかり口を滑らせたみたいだったけど。
ジェイの説明で、オレは自分のことを知った。
あの時だって驚いてたんだ。
だけど、秘密をずっと隠してきて、隠せなくなって「俺が言う」って言ったときのジェイがすごく…
つらそうで。
それでまた心の表面が落ち着いていって…。
驚いてオレが取り乱す前に、ユン兄ちゃんの優しさが、オレに伝わってきたから。
ユン兄ちゃんを苦しめていたオレ自身が悔しかった。
オレのためだけに、自分を犠牲にしてしまうユン兄ちゃんが悲しかった。
けど…嬉しかったんだ。オレだけを、こんなに思ってくれていて。
オレはこの人が好きだ、と思った。…小さいころから好きだったけどさ。それよりもっと…
なんていうか…
あー、表現のしかたがわっかんないっ。なんか好きなんだよ。
この人がそばにいてくれたら、それだけでいいって思っちゃうくらい。
シララで母さんに会ってからも、母さんたちと家に戻ろうなんて思わなかった。
…戻ろうと思えなかった。
これから姿が変わらないという自分。
五年の間ジェイと旅をして、彼の変わらない姿を見てきてるオレだから。
月日が経てば、人々は、変わらないオレたちをおかしいと思うはずだ。
そんな世間体に母さんたちをさらして巻き込みたくない。母さんはやっと普通の家庭を持てたんだから。
…母さんはずっと望んでいたはずなんだ。旦那さんがいて、その人との間に生まれた子供がいて、
ていう普通の家庭を。
オレは実験で生まれた命。
これまで、それを隠して母子家庭を貫いてきた母さんには…もっと幸せになってもらいたい。
ドーティスとイリアスがいる、あったかい家庭で。
オレはジェイと旅をしようと思った。…ジェイなら、オレについてきてくれそうだったし。
後ろからジェイに包まれたとき、どうしようもなく幸せだった。
なんでこの人はオレのことこんなにわかってくれてるんだろう、って思ったら、自然に涙が出てきて。
「俺と、いよう」って…。
オレといてくれるんだ、ジェイもオレといたいんだ、ってわかってしまったら、もうだめだった。
泣くのを抑えられなかった。
オレの口から出たのは憎まれ口だったけど、それもちゃんとわかってくれてて。
ああ、本当にオレ、この人が好きだ。と思ったんだ。
「金色に込められていた思いが、青色に受け継がれれて」
・・・・・・・ end ☆
↑モドル
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